プラド美術館展②ベラスケスの絵7点
プラド美術館展@兵庫県立美術館では、7枚のベラスケスの絵がやってきました。
今回は、その7枚をご紹介いたします。
1.フアン・マルティネス・モンタニェースの肖像(1635年)
Portrait of the Sculptor, Juan Martinez Montanes, 1635 - Diego Velazquez - WikiArt.org
彫刻家作業中のひとこま。国王フェリペ4世の顔の製作途中だそうだが、粘土の描き込みが未完過ぎて王をディスったことにならないか不安になるレベル。
彫刻家はモデルの王を見ているのか、画家のベラスケスを見ているのか、はたまたあなたを見ているのか?という問いかけがオーディオガイドを通して及川ミッチーから囁かれる。 わたしが感じたのは、一番最後の「あなたを見ている」感覚。時・国を越えて、このおじさまはずっと鑑賞者の顔を見ている感じがする。ベラスケスの描く人物は「いる感」が凄い。絵の中に、生きて存在している。
あと、本当に全部リアルなんだけど、あごの髭だけとってつけた感があるような感じがする…。一回気になりだしちゃうとあご髭ばっかり見ちゃう。(失礼ですみません。)
参考リンク:
作品紹介6 《フアン・マルティネス・モンタニェースの肖像》 ディエゴ・ベラスケス - プラド美術館展
2.メニッポス(1638年)
Menippos, 1639 - 1641 - Diego Velazquez - WikiArt.org
古代哲学者メニッポスを、当時のスペインの貧しい老人風に仕上げた1枚。メニッポスは富や財に懐疑的な考えを持っていたとされているので、ベラスケスも「もしメニッポスが現代に生きていたら、きっと着飾ったりせず、質素な服だったんじゃないかな」と思ったんでしょう。
ベラスケスの誇張せずリアルに描く姿勢が好きです。信用できる描き手だなって思います!
純粋にこのおじさま、めちゃ魅力的。貧しくても人生楽しんで生きてる系の表情。こんなおじさま近所にいてほしいよ。ポストカード買いました。
参考リンク:
作品紹介7 《メニッポス》 ディエゴ・ベラスケス - プラド美術館展
3.マルス(1638年)
Mars, c.1640 - Diego Velazquez - WikiArt.org
軍神・マルス。
ドラマ「Mars(マース)」のキスマイの主題歌が脳裏をよぎる。「♪ゲッゲラップ ゲッゲッゲラッナ~ウ」なんて思いながらこの絵を見ているのはこの美術館で今私だけだろうから早く絵に集中した方がいい。
キスマイを脳内からかなぐり捨てて絵を見てみる。オーディオガイドのミッチー情報によると、若々しく勇敢なマルスをあえて中年っぽく疲れた感じでとらえた視点が面白い絵だとのこと。当時裸体は、画家の技術を見せるための重要な絵のテーマの1つだったそうです。
あとなんか表情がマネが書いたモリゾの肖像画に似てる気がした。
現物よりも、パソコン上で見た絵の方が兜や地面に放置された盾(?)の質感が際立っていていい感じかも。
参考リンク:
作品紹介4 《マルス》 ディエゴ・ベラスケス - プラド美術館展
4.狩猟服姿のフェリペ4世(1632-1634年)
Philip IV King of Spain, c.1632 - c.1633 - Diego Velazquez - WikiArt.org
オーディオガイド情報によると、当時スペインは財政難だったので「質素倹約できる王様」感を伝えるために華美な絵にしなかったとのこと。なるほど!
地味で質素な服を着ていても、イケメンじゃなくても(笑)、威厳をもった人物としてドーンと表現できるベラスケスの技量は凄い。 凄いのは、威厳あるけど自然体というところ。絶妙すぎる。
狩猟は、王族のたしなみであると同時に、軍事訓練の側面もあったそう。狩りができる王様は軍事の才能もある、というメッセージも含んでいる。犬もびしっとしつけられている。
参考リンク:
作品紹介1 《狩猟服姿のフェリペ4世》ディエゴ・ベラスケス - プラド美術館展
5.バリェーカスの少年(1635-1645年)
王族のお慰み役として、障害を持つ人々も宮廷に仕えていました。ベラスケスは彼らをモデルにいくつか絵を残しているんですが、彼らをことさらに「見世物」として描くのでなく、ありのままに描いているのがポイント。
ベラスケスが似顔絵師だったら、過度に美化せず卑下もせず描いてくれそう。
これ、本当に表情の切り取り方がいいですよね!この絵描いてるとき、ベラスケス楽しそう。
参考リンク:
作品紹介3 《バリェーカスの少年》 ディエゴ・ベラスケス - プラド美術館展
6.王太子バルタサール・カルロス騎馬像(1635年)
Prince Balthasar Carlos on horseback, 1634 - 1635 - Diego Velazquez - WikiArt.org
カルロス王子5~6歳 。ハンズアップで馬乗りこなす。馬が後ろ足だけ立ってるときは非常にバランスを取るのが難しいそうで、この体勢でも堂々としているカルロス王子凄いよ!という絵です。
当時は王・王妃それぞれが乗馬している絵にはさまれて、3枚セットで飾られていたそうです。
5・6歳でこんな馬乗りこなせる訳ないんだから、当時見た人も「王子かっこいい・凄い」よりも「王子可愛い(笑)」みたいな感情になったんじゃないかなぁ。もしくは本当に馬乗りこなしてたんかな?!
なんか、戦隊ものとか仮面ライダーの衣装着て、遊園地の写真撮影コーナーでかっこつける少年と同じような可愛さをどうしても感じてしまう。
参考リンク:
作品紹介2 《王太子バルタサール・カルロス騎馬像》 ディエゴ・ベラスケス - プラド美術館展
7.東方三博士の礼拝(1619年)
Adoration of the Kings, 1619 - Diego Velazquez - WikiArt.org
イエスが生まれたときに東から3人の博士が礼拝にやってきたというシーンですが、モデルはベラスケス一家なんだそうです。自分がベラスケスの奥さんだったら、こんな絵てくれたら嬉し過ぎますよね。
赤ちゃんイエスが、マトリョーシカみたいで可愛い!モデルは男の子じゃなくて娘さんなんだそうです。
これを描いたのが20歳ですよ…。恐ろしいですね。
参考リンク:
作品紹介5 《東方三博士の礼拝》 ディエゴ・ベラスケス - プラド美術館展
ふう~! 7作品、こんな感じでした。
存在自体がスペイン王国の宝ともいえるベラスケスの絵をたくさん見ることができ、贅沢きわまりない時間でした。
ベラスケス以外にも、すてきな絵がまだまだあったんで、それについても書こうと思います!