モロー展①出現
あべのハルカス美術館で開催中の「ギュスターヴ・モロー展」へ行ってきました。
2年前に同じ会場で「マティスとルオー展」をやっていて、その時に2人はモローのもとで絵画を学んだと知りました。
2人の師匠であるモロー先生が、満を持しての登場!
モローと言えば、サロメ。
この浮き出てくるような背景のオリジナリティが凄かった!
神秘的で、なんだか東洋の神殿のような雰囲気でした。
正直サロメより私はそっちばっかりに目がいっちゃった。笑
モローの時代から、サロメのイメージがどんどん魔性の女(ファム・ファタル)化していきます。
それまでサロメちゃんは、女王であるお母さんに「踊りのご褒美にヨハネの首が欲しいって言いなさい」って命令されて「ハイ、ママ! 首くださ~い」と素直に首をリクエストしちゃう女の子でした。
それが、もう「私が躍るんだから、ヨハネの首くらい、くれるわよね…?」的な、セクシーレディに。
もはやサロメちゃんじゃないな、サロメ姉さんと呼ばせていただこう。
今の日本に生まれてたら、もう男に服やら靴やら鞄やら車やら、貢がせるんでしょうね。
19世紀末で、人々が心に不安を抱えている時代。
人間の内面を模索しよう、表現しようとする気運が芸術でも高まります。
そのような芸術の一派は主に「象徴主義」とグループ分けされており、モローさんはその代表格です。
モローさんは心の中を探検していった結果、「女性」というキーワードにぶちあたったようです。
このモロー展では、色んな女性が登場して、楽しかったです!
さて、モロー展の目玉であるこの「出現」という絵、一体どんなシーンなんでしょう。
サロメ姉さん自体がもはや聖書の登場人物というよりモローさんのオリキャラ化していることを考えると、このシーンも聖書にはなくモローさんの想像の中のワンシーンなのかなと推測されます。
生首として空中に「出現」するヨハネさんの表情。
恨みつらみ、悲しさ、やりきれなさ、とにかく負の感情満載です。
そんな負のオーラ満載(後光は差してるけども)な生首が現れたというのに、サロメ姉さんのキリッとした表情ときたら!
むしろビシッと生首を指さして、「お前、死後まで、しつこい」くらい言ってそうですもんね。
強いわ…。
ホラー映画なんかだと、登場人物は幽霊が出たらもうおびえるしかないじゃないですか。
でもサロメ姉さんは、「え?何? こっちは踊ってるんですけど? 演舞中に出てくるんて空気読めねぇな。」くらい言い放ってそうですもんね。
この絵の近くに素描もあって、そこには生首が出てきてビックリした表情のサロメのデッサンもあったんですけど、モローさんは最終的に作品にするときにびっくりじゃなくて強気なサロメ姉さんを選択したんだなぁ。
むしろ、サロメ姉さんが生首を召喚しましたくらいの勇ましさですよね。
あと、モローさんの絵の特徴として気づいたこと。
風景画と人物画の中間みたいな絵が多い。
人物だけじゃなく、背景もトータルで、総合力で雰囲気を醸し出してきてる。
その総合力のせいかな、説得力が凄い。
「サロメ姉さんに所望されたら、生首さしだすしかないかぁ~」って思わせちゃうオーラがあるんですよね。
不思議な画家だな~!