お月様が笑って見えた夜のこと
最近、仕事がバタバタして忙しい日が続いています。
業績は伸びないし、人員は減らされるし、仕事は増えるし、割と辛めだけど誰からも褒められない、一言でいうと「残念!」な状況で、昨日も飲み会をドタキャンしての残業を終えて、あ~ぁってため息つきながらの帰宅でした。
美術ブログでまさかの仕事についてのグチ、すいません!
でもそんな精神状態であったことを説明しておきたいんです。
なぜかというと、コルクボードに張り付けていたポストカードのこの子が、昨晩はじめて微笑んでいるように見えたからなんです。
https://www.kanazawa21.jp/data_list.php?g=97&d=118
奈良美智さんの作品です。
このポストカードは、大学生の時に旅行で行った金沢21世紀美術館で買いました。
実物の作品はでっかいお皿みたいで、ちゃんと本物の夜空の月みたいに壁を暗くした展示室の上方に飾られていました。画面じゃ伝わりにくいですけど、実物は表面がラメラメなんですよ。
で、大学生だった私は、この表情に「すべてを見透かしているな」って感じたんですね。
去年豊田市美術館で開催された奈良美智展で再会したときも、やっぱり同じことを思いました。
アジア人のような西洋人のような、男の子のような女の子のような、いやそもそも人間のような人間じゃないような。
この捉えどころのなさが神秘的で、まるで人智を越えた存在に見えました。
断定できないものって、それだけ多くのものを投影できる余地を残してくれているということだから、器がでかい。
この目に見透かされると自発的に自分の行動とか考えについて自問自答したくなる、そんな作品だなと思ったんです。この子が何を言ってくれる訳でもないんですけどね。
こんな感覚には日常でなかなか出会えないから、忘れないようにポストカードを買ってずっと部屋に飾っていました。
気づいたら、このお月様に見られてても恥ずかしくない生活を送れてるかな、と自分の状態バロメーターを計る基準になっていました。
そんなこの子が、くたくたになって帰宅した私の目に、はじめて微笑んでるように見えたんです。
いつもの「お見通しだよ」っていう顔じゃなくて「大丈夫~がんばれ~」というようにフッと笑っていると感じたのは初めてでした。
こんなことあるんだと思いました。
同じ人が見ても状態が違うとこんなに受け取り方が変わってくるんですね。
この作品は柔軟性が高くて、見る人の見たいように感じさせてくれる懐の深さがあります。
不思議なもんで「がんばるかぁ」っていう気になりました。
以上、とりとめのないお話でした。
昨日の夜は、このポストカードを買った大学生だった自分に助けられたなと思いました。